荒野の詩人
荒野とは 荒野――それは、リンダヴァルバリア帝国とキウェア共和国の間に広がる、終わりなき無の大地。 いつからか、神に見捨てられた荒野という意味を込めて、荒野(アバンナ)と呼ばれている。 遥か昔、この地には強大な王国が存在した。だが、その奢りが神々の怒りを買い、栄華は一夜にして灰と化したという。 以降、数多の国家や勢力がこの地を手に入れようと試みたが、いずれも自らの領域が荒野に侵食されるという奇妙な現象に悩まされることとなった。 最終的に帝国と共和国は不可侵条約を締結し、この地を「アンタッチャブル・ランド」と定める。 そうして荒野は、支配の手を逃れたまま、時代の残滓と夢想家たちの吹きだまりとなった。 いま、この地には―― 罪を逃れた犯罪者、掟を拒んだ無法者、土地を定めぬ遊牧民、理想に殉じた無政府主義者、道を探す放浪者、真理を求める芸術家、そして禁忌の知を追う科学者たちが暮らしている。 さらに、荒野には生まれながらに棲まう者たちもいる。 古代王国の使役ホムンクルスとして造られ、いまは自由に生きる小人族。 古の魔術を継ぐ魔女や魔法使い。 王国以前からこの地に根づいてきた土着神や地底人、数えきれぬほどの野生の獣たち。 そして、稀に人間が罹る風土病――聖化症に冒された者たち。 名も知らぬ、ただぶらぶらと歩くだけの謎の詩人も。 混沌と奇跡が交差するこの地で、詩人は今日もまた、新たなる物語を紡ぐ。 地平の果てを目指して、風のままに。 スタート:夜の荒野、星々が輝く。荒野詩人のゆくあてのない行き当たりばったりの旅が始まる。傍らには詩獣がつかず離れず無言でついてくる。自分以外のやつらには見えないらしい。ぽわぽわ毛を手に入れる。 太古の森に迷い込む。臓物を思わせる曲がりくねった古い木の幹が迷路のような森を形作っている。この森は海におけるサンゴ礁のようなもので、様々な弱者が隠れ住んでいる。とうの昔に絶滅したと思われている生き物もチラホラいる。小川のほとりで一服していたら、なれなれしい小人にたばこをねだられる。やつらの嫌いな気取った五行詩を読んで撃退するも、いつの間にか1000ポエット掏られていた。 小川のそばで夜なのに寝もせず鳥たちがぴーちく騒いでいる。反逆の詩を詠む脱獄囚が卵を盗んだらしい。そいつは王国でも有数の政治犯で、小さい頃かことあるごとに様々なものに反抗し、長じるにし...